福利厚生・休暇 13 min

リモートワーカーに提供すべき英国の従業員福利厚生

執筆者: Francesco Cardi
2024年2月9日
Francesco Cardi

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米国企業にとって、英国でリモートワーカーを雇うことは、共通の言語や似たところの多い文化を考えると、魅力的なアイデアかもしれません。

しかし、ここで注意が必要です。現地で労働者を雇う場合は、福利厚生が異なるということをよく理解しておく必要があります。

英国の企業は、英国の労働法を遵守するために注意深く考えられた従業員福利厚生一式を提供しなければならず、英国のリモートワーカーを雇用する外国の雇用主は、これらの福利厚生の細目の内容も提供しなければなりません。 

さらに企業は、基本的な要件を備えるに留まらず、より競争力のある福利厚生制度の提供を検討する必要もあります。こうすることにより、優秀な人材を引き付けることができるようになります。

この記事では、英国の様々な法定の福利厚生、標準的な福利厚生、特別な福利厚生について考えます。また、これらの福利厚生の一部は、現地の法人を設立することなく提供できるということをご説明します。

英国において福利厚生を受ける資格のある人

従業員(employee)と労働者(worker)は、法定の福利厚生を受けることができます。英国では、従業員と労働者が区別されています。 

従業員は、従来のフルタイム労働者の定義を満たす者で、雇用主と雇用契約を結んでいます。 

労働者は、契約社員と従業員の間のグレーゾーンいる者です。一部の企業では、労働者を契約社員として分類しようとして、英国の法律上、問題が生じました。

従業員と労働者の詳細については、Remoteの英国労働法の概要をご覧ください。また、Remoteの英国におけるリモートワーカーの雇用に関するガイドでは、英国での雇用、給与処理、福利厚生、労働法に関するさまざまなトピックを取り上げています。

Remoteは、英国のすべての労働法の遵守を徹底するためのEORソリューションにより、企業が分類上のトラブルを回避できるよう支援します。詳細は、以下でご説明します。

英国の法定の従業員福利厚生とは 

英国では、従業員福利厚生が充実しています。以下で、英国の福利厚生の全体像をご紹介します。

最低賃金と時間外労働手当

最低賃金法の規定において、英国は、関連しつつも異なる2つの概念、全国最低賃金(NMW)と全国生活賃金(NLW)を使用しています。

NMWは、学校を卒業して働き始める人に適用される段階的な制度です。2023年4月現在、この最低賃金の範囲は、時給5.28ポンド(18歳未満の従業員)から、時給10.18ポンド(21歳~22歳の従業員)までとなっています。

NLWは、現在時給10.42ポンドに設定されており、従業員が23歳になった時点から適用されます。この金額は、毎年4月に調整されます。

なお、英国政府は労働者に対する時間外労働手当を義務付けてはいません。時間外労働が常態化しているときは、多くの場合、企業が雇用契約で時間外労働手当を定めることを選択しています。

有給休暇

英国には、「法定の年次休暇」として知られる、寛大な有給休暇(PTO)ポリシーがあります。

英国の労働者には、最低20日の有給休暇と8日の有給の祝日、合計28日(5.6週間)の休暇を取得する権利が与えられています。北アイルランドではさらに2日間の追加の祝日があり、合計10日の有給の祝日となります。

雇用主は、従業員に休日出勤手当を支払う必要がありますが、休日出勤を自ら選択した従業員には時間外労働手当を支払う必要はありません。優秀な人材にとっての魅力的な職場となるように、多くの雇用主は最低28日の有給休暇を提示しています。

多くの場合、英国の従業員が繰り越すことができる有給休暇の日数は、1年あたり最大8日間です。他の種類の休暇(長期病気休暇など)を取ることを余儀なくされた従業員は、最大20日間まで繰り越すことができます。

雇用主は、従業員が年の途中で退職した場合、その年に積算された休暇日数を上限として、未使用の有給休暇に対する支払いを行う必要があります。

英国の労働者を雇用している国際企業は、有給休暇を無制限で付与することができますが、従業員に十分な休暇を取らせる義務があります。雇用主が自国の労働者の有給休暇を記録していない場合でも、英国の法律を遵守するためには英国の労働者の有給休暇を記録する必要があります。

法定の傷病手当

英国の従業員は、「フィットノート」とも呼ばれる医師の診断書を提出することなく、1週間まで欠勤することができます。ただし、1週間を過ぎる場合、病気の従業員は雇用主に、病気を証明する医師の診断書を提出しなければなりません。

法定の傷病手当は、長期傷病手当とも呼ばれ、1週間あたり109.40ポンド(2023年4月現在)が雇用主から支払われます。従業員の病気が継続する場合、雇用主は最長28週間、法定の傷病手当を支払わなければなりません。雇用契約はこの期間を延長することはできますが、短縮することはできません。

長期病気休暇中の労働者を強制的に働かせることはできませんが、欠勤中も有給休暇は出勤中と同様に積算されます。従業員が数週間の病気休暇の後に退職する場合、雇用主は病気開始日までではなく、退職日までに積算された未使用の有給休暇に対する支払いをしなければなりません。

産前産後休暇

英国の産前産後休暇は、通常の産前産後休暇と追加の産前産後休暇の2つに分かれています。通常の産前産後休暇として最初の26週間、追加の産前産後休暇としてその後の26週間、合計52週間の休暇を取ることができます。妊産婦は、出産予定日の11週間前から休暇を取得できます。英国の法律では、妊産婦は出産後少なくとも2週間の休暇を取ることが義務付けられています。

雇用主は、産前産後休暇の最初の6週間に、各妊産婦の平均賃金の90%を支払うことが義務付けられています。それに続く33週間は、雇用主は平均賃金の90%または週172.48ポンドのいずれか低い額を支払わなければなりません。雇用主は、産前産後休暇の最後の13週間に支払いを行う必要はありませんが、妊産婦が仕事に復帰する必要がない場合は、その休暇を取得する権利があります。

仕事への復帰日の変更を希望する母親は、8週間前までに雇用者に通知しなければなりません。

法律で認められている産前産後休暇のすべての日数を取得するための最低労働期間は設定されていません。

父親の育児休暇

英国の父親の育児休暇は、産前産後休暇よりはるかに短く、わずか2週間です。父親の育児休暇を子供が生まれる前に取ることはできませんが、従業員は子供が生まれてから1年間はいつでも、連続して休暇を取得することを前提に父親の育児休暇を利用することができます。

妊娠中の従業員のパートナーは、性別に関係なく父親の育児休暇を取得できます。父親の育児休暇を取得するには、従業員が以下のいずれかに該当する必要があります。

  • 子供の父親

  • 出産する人の法律上のパートナー

  • 養子縁組をしようとしている人

  • 代理出産後子供の扶養をすることが計画されている場合、予定されている子供の親

産前産後休暇を取得する妊産婦には、資格を取得するための最低労働期間が定められていませんが、父親の育児休暇では、資格を取得するために最低26週間の連続の雇用が要件となっています。

共有育児休暇

共有育児休暇は産前産後休暇や父親の育児休暇と重複して取得することはできませんが、多くの家族が出産後に休暇を共有することを選択します。共有育児休暇は最大50週間まで延長可能で、37週間まで有給となります。親は、共有育児休暇を同時にあるいは連続して取得する必要はありませんが、出産後1年以内に取得する必要があります。

養子縁組の手当と休暇

法定の養子縁組休暇は、産前産後休暇に準じます。養子縁組をする従業員、または代理出産をする従業員は、合計52週間の休暇を取得することができます。その期間の前半は「普通」の養子縁組休暇、後半は「追加」の養子縁組休暇と呼ばれています。

法定の養子縁組手当は、最初の6週間はその人の1週間あたりの平均収入の90%、次の33週間は法定額または90%(いずれか低い方)です。

法定の親の忌引手当および忌引休暇

法定の親の忌引手当は、従業員またはそのパートナーが18歳未満の子供と死別した場合、または妊娠24週以降に死産した場合に支給されます。従業員は1週間または2週間の休暇を選択でき、別々に取得することも、まとめて取得することもできます。

法定の解雇手当

勤続2年以上の従業員が余剰人員となった場合(例えば、人員削減の一環として解雇された場合)、通常、年齢、週給および勤続年数に応じた解雇手当を受け取る権利があります。 

これらの従業員には、22歳未満であれば1年ごとに半週の給与、22歳以上41歳未満であれば1年ごとに1週間の給与、41歳以上であれば1年ごとに1週間半の給与が支給されます。

年金プランまたは年金制度

英国で働く労働者の雇用主には、労働者の給与の最低3%を年金制度に拠出することが法律で義務付けられています。従業員は、給与の最低5%を拠出しなければなりません。雇用契約では、これらの拠出金を増額することはできますが、減額することはできません。

年金制度は様々ですが、多くは確定拠出型と確定給付型の2つに分類されます。確定拠出型年金では、従業員の拠出額に応じて将来の支払額が増加します。運用方法は、米国の401(k)プランと同様です。 

確定給付型年金では、従業員は一定額を拠出しますが、支給額は拠出額には依存しません。代わりに、退職時の支給額は、従業員の勤続年数や最高職位など、他の要因に基づいて決定されます。

多くの場合、雇用者は、従業員の年齢が22歳から66歳で、年収が10,000ポンド以上であれば、自動的に従業員を年金制度に加入させます。雇用主は最長3カ月、年金加入を延期することができますが、そのためには労働者に延期を書面で通知し、延期する法律上の正当な理由がなければなりません。

英国の標準的な従業員福利厚生

上記の英国の法定の福利厚生に加え、英国の従業員は、一般的に、制度の一環として一連の標準的な福利厚生を受けることができます。以下に例を挙げます。

フレックスタイム制

選択肢には、一般的に、フレックスタイム制(従業員のコアタイムは定められているが、始業と終業の時間は変更できる)、時差出勤制(始業、終業、休憩の時間を変更できる)、リモートワーク制(従業員が自宅や他の場所で働くことができる)などがあります。 

生命保険

多くの雇用主が福利厚生制度の一環として、英国の生命保険または「在職中死亡」給付を提供しています。これは、従業員が在職中に死亡した場合、選択した受取人(多くの場合、配偶者、パートナー、子)に非課税で一時金が支払われる保険です。 

支払額は、通常、従業員の1年間の給与の倍数(通常は2倍から4倍)です。

健康保険

英国の国民保健サービス(NHS)は、居住者に幅広い医療サービスを無料で提供しています。これには、一般開業医(GP)の予約、病院での治療、救急医療、出産サービス、特定の種類の長期疾患管理などが含まれます。 

しかし、NHSのサービスの範囲はとても広いため、待ち時間が長くなるなどの問題が生じています。そのため、民間の医療サービスを追加する人が増加しています。 

英国企業の中には、総報酬の一部として特別な民間の医療保険を提供することで、優秀な人材を惹きつけている企業もあります。民間の医療保険は、待ち時間の短い診療所を利用できるようにしたり、治療の選択肢を増やしたりします。雇用主は現金給付を行うことが多く、従業員はそれを利用して民間の保険に加入します。

追加の保険

NHSや民間の医療制度では、いくつかの特定の種類の医療は範囲に含まれていないため、従業員の報酬の一部として追加の保険を提供している雇用主もいます。このような保険には、歯科保険、視力保険、不妊治療支援、特殊障害支援など、標準的な医療では適用範囲外となるものが含まれています。

長期休暇

長期休暇は、通常、病気や介護、サバティカルなどを理由とする長期欠勤を指します。 

長期病気休暇や産前産後休暇のような特定の長期休暇には、前述の通り、法律の規定が適用されます。

しかし、緊急の家族休暇やサバティカル(キャリア休暇)など、他の休暇は法律で義務付けられているものではなく、すべて雇用者の裁量に任されています。 

トレーニングと能力開発の機会

これらの福利厚生は、従業員の専門分野での成長やスキルアップに役立ちます。多くの雇用主は、OJT(オンザジョブトレーニング)のほか、コースやワークショップ、会議などの受講料の払い戻しなど、学習を進めるためのリソースを提供しています。 

従業員支援プログラム

これらのプログラムは、従業員が仕事のパフォーマンスや健康、福祉に悪影響を及ぼす可能性のある個人的な問題に対処することを目的としています。これには、ストレス、精神的な問題、経済的な問題、家族の問題などに対するカウンセリングやサポートが含まれます。 

従業員支援プログラムでは、秘密が守られます。これは、従業員が困難な状況に直面したときに、積極的なサポートを提供することで、より健康的で生産性の高いワークフォースを提供することを目的としています。

英国の特別な従業員福利厚生

英国の企業は、従業員の一部または全員に、以下のような様々な福利厚生を提供している場合があります。

収入保障保険

この福利厚生は、終身医療保険とも呼ばれ、ケガや病気で働けなくなった場合に保険金が支払われる保険です。毎月、非課税の給付金が支給され、復職または保険期間終了時に退職するまで、または死亡するまで継続します。

収入保障保険はあまり普及していませんが、雇用主、特に大企業では福利厚生として提供されている場合があります。個人的なファイナンシャルプランニングの一環として、個人で収入保障保険に加入するのが一般的です。

社用車または車両手当

これらの福利厚生は、通常、仕事のために広範囲に出張する従業員のために用意されています。会社から提供される車両や、車両関連の費用のための月々の給付金などが含まれる場合があります。

賞与およびストックオプション

これは一般的に、一部の企業がハイレベルの従業員に対して提供する追加的な金銭インセンティブで、現金の賞与や自社株などが含まれます。

個人年金制度

企業によっては、法定の年金制度の給付よりも有利な条件で退職後の蓄えを増やすことができる、追加の個人年金制度を提供しています。

ジムへの加入またはウェルネスプログラム

ジムの会費補助や会社が後援するウェルネスプログラムなど、健康増進を目的とした福利厚生を提供している雇用主もあります。

敷地内保育

大企業に多く見られる例として、従業員福利厚生として事業所内託児所を提供している企業もあり、従業員の仕事と家庭の両立を促進しています。

Remoteによる英国の従業員への優れた福利厚生の提供

英国の従業員福利厚生に関する長いリストは、威圧的に感じられるかもしれません。英国でリモートワーカーの雇用を検討されている場合、自社の人事部門でここまできめ細やかな対応ができるかどうか自信がないという場合もあるでしょう。

このような会社にとっての朗報は、170カ国以上の雇用事務所でEORとなっているRemoteのような第三者企業が、これらのサービスを代行してくれるということです。 

Remoteはグローバル人事のあらゆる分野におけるエキスパートです。私たちは、各分野の優秀な人材を惹きつけ、維持するための優れた福利厚生制度を英国のチームに提供するお手伝いをいたします。 

当社の英国におけるEORおよび契約社員管理ソリューションの詳細については、sales@remote.com までお問い合わせください。

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