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オーストラリアにおける従業員の福利厚生: 理解しておくべき点

執筆者: Bruce Gilbert
Bruce Gilbert

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現在、海外雇用は以前よりもはるかに簡単になっています。世界各地の優秀な人材の活用は、多くの企業の事業成長にとって不可欠であることが明らかになりました。オーストラリアには、特に金融サービス、鉱業、バイオテクノロジー、医療研究など、深い専門知識を持つ優秀な専門人材が数多く存在しています。

24時間体制でカスタマーサービスを提供しようとする企業にとって、国特有のタイムゾーンは魅力的な差別化ポイントになり得ます。オーストラリアの労働者は、APACの複雑なタイムゾーンに対応しているため、この例では、雇用主にとって魅力的な選択肢となります。

リモートワークの普及により、大陸を超えたコラボレーションがこれまで以上に容易になった今、先進的でグローバル志向のある企業は、これまで十分に評価されてこなかったこの人材市場への進出を進めています。

しかし、オーストラリアの雇用規制は厳格かつ独特です。オーストラリアの応募者に内定を出す前に、雇用主は現地の労働法を十分に理解し、特に法令を遵守した魅力的な福利厚生パッケージを開発する必要があります。

本記事では、オーストラリアの法律で企業が支給を義務付けられている法定福利厚生と、現地市場で従業員が求めているその他の福利厚生についてご紹介します。内容は以下のとおりです。

  • オーストラリア人労働者を正しく分類し、福利厚生の受給対象者とその内容を判断するには

  • 支給義務のある法定福利厚生

  • 優秀な人材の誘致を促すその他の特典

  • オーストラリア人従業員の雇用、オンボーディング、給与支給を簡素化するために、Employer of Record (EOR)の利用を開始すべき理由

オーストラリアにおける福利厚生の対象者

雇用法は、主にオーストラリア国内で就労するオーストラリア国民に適用されます。フルタイムおよびパートタイムの従業員は法定福利厚生の対象となりますが、臨時労働者は福利厚生が制限される場合があります。

場合によっては、国外に居住していても、オーストラリア企業との雇用契約をオーストラリアで結んでいるオーストラリア人労働者であれば福利厚生の対象となることがあります。

オーストラリアで雇用されている外国人は、雇用主の所在地がオーストラリア以外の国である場合でも、オーストラリアの労働法によって保護されています。

従業員と契約社員の分類

諸外国と同様に、オーストラリアも法的に労働者の種類を区別しています。こうした区別には以下が含まれます。

  • 従業員

  • 契約社員

  • 個人事業主

  • 取締役

  • 会社役員

ここで注意すべき点は、従業員は福利厚生や税控除の対象ですが、契約社員は対象外だということです。しかし、契約社員は、働き方や働く時間・場所に柔軟性があります。

雇用主は、この微妙な線引きを理解する必要があります。

企業が労働者を従業員と見なしているか、契約社員と見なしているかにかかわらず、重要な判断は立法府が行います。

雇用関係を従業員と分類すべきであり、義務付けのある法定福利厚生を提供していなかったことが判明した場合は、誤分類による深刻なリスクが生じ、それに伴う罰金や罰則の対象となる可能性があります。

この概念を理解するための詳細な情報については、誤分類に関する専門ガイドを必ずお読みください。

オーストラリアの契約社員に福利厚生を提供する

分類法は、オーストラリアの契約社員への福利厚生制度の提供を義務付けていなくても、禁じているわけではありません。

契約社員に手厚い福利厚生を支給することで、特にリモート環境にある契約社員との間に強い信頼関係を築くことができます。ただし、支給する福利厚生の種類によって、恒久的施設や誤分類のリスクが生じることには注意が必要です。

有給休暇、フレックスタイム制、育児休暇規定など、価値の高い福利厚生を提供することで、多くの場合、この法律を遵守できます(これについては、国際契約社員に福利厚生を提供するガイドで詳しく説明しています)。

RemoteのようなEmployer of Record(EOR)は、現地の雇用法に従って関連するリスクを最小限に抑えられる、具体的なアドバイスを提供できます。

オーストラリアにおける法定および一般的な従業員福利厚生

法定福利厚生は義務的福利厚生とも呼ばれる権利です。雇用主は、これを従業員に支給するよう法律で義務付けられています。一般的な例としては、年次有給休暇、育児休暇、労災保険、有給病気休暇などの福利厚生が挙げられます。

オーストラリア国内で雇用するということは、オーストラリアの労働法、主に連邦法である2009年公正労働法全国雇用基準(NES)を遵守するということです。この法律は、オーストラリアの従業員の福利厚生と権利、さらに雇用主の要件を定めています。

雇用主の税負担

雇用主は従業員に代わって、次のような特定の税負担分を納付する必要があります。

  • 州の給与税: 4.85%~5.5%

  • 関連する地域負担金

税率は地域によって異なります。各州および準州の具体的な税率は、Remoteのオーストラリア国別雇用ガイドを参照してください。

スーパーアニュエーション(老齢退職年金) - オーストラリアの退職年金制度

老齢退職年金は、雇用主がオーストラリアの従業員に対して支給が義務付けられている法定年金制度です。

こうしたプランにはさまざまなサプライヤーがあり、従業員には希望するプランを選択する権利が認められています。あるいは、承認された団体退職年金制度に加入することもできます。

雇用主の老齢退職年金負担分の最低要件は10.5%です。雇用主は、四半期当たり57,090豪ドル(AUD)までの給与に対して、オーストラリアスーパー保証と呼ばれるこの最低拠出金を納める必要があります。また、この率は2027年までに12%に引き上げられる予定です。

多くの雇用主は、各業界の標準的な拠出額に従い、最低限必要な年金額以上の金額を納めています。

これは、オーストラリアの職場では一般的な福利厚生として追加されています。期待されてはいないものの、こうした特別拠出金を負担することで、従業員とその家族の将来に対する真摯な配慮を示すことができます。こうした条件を提示することで、応募者が競合他社よりも自社の待遇を選択するよう働きかけることができます。

休暇・休日

全従業員には、暦年で少なくとも20日間の休日を付与する必要があります。これは、フルタイム労働者にもパートタイム労働者にも適用されますが、臨時労働者には適用されません。

また、従業員には8つの国民の祝日と、さらに準州の祝祭日を休日として取得する権利が付与されます。次のような祝祭日がありますが、オーストラリアの各州では、さらに祝祭日を設けている場合があります。

  • 元日

  • オーストラリアの日

  • 聖金曜日

  • イースターマンデー

  • ANZACの日

  • クリスマス

  • ボクシングデー

長期勤続休暇

ある雇用主の下で勤続10年が経過した従業員は、13週間の長期勤続休暇を法的に請求できます。また、勤続年数が1年増えるごとに1.3週間の長期勤続休暇が付与されます。この休暇は、さらに5年間勤務した後でなければ取得できません。

長期勤続休暇は、フルタイム、パートタイム、臨時労働者に適用されます。規制は地域によって異なる場合もあります。

産前産後休暇・育児休暇

オーストラリアの育児休暇は、育児休業手当(PLP)制度によって規定されています。この休暇は政府から支給されますが、雇用主は支払いサイクルの中で対象となる保護者に資金を分配する必要があります。この制度はすべての企業に適用されます。

PLP制度の内容は次のとおりです。

  • 主たる養育者には、国の最低賃金に基づく18週間分の給与を支給する

  • 対象となる父親には、国の最低賃金に基づく最大2週間分の給与を支給する

対象となる要件

  • 雇用主の下で12か月勤務した従業員

  • パートタイム従業員や臨時従業員も利用可能

これは中程度の支給水準であり、より先進的な北欧や欧州の育児休暇制度と比較すると大幅に低くなっています。

海外雇用主はこの点に注目し、この分野での保障とワークライフバランスを重視するオーストラリア人労働者を引き付けるには、福利厚生プランのカスタマイズの一環として、育児休暇のさらなる支給を検討する必要があります。

RemoteのようなEORは、オーストラリアの従業員に合わせた雇用契約書を作成することで、この福利厚生を拡充し、雇用契約の締結を簡素化できます。

病気休暇と介護休暇

NESによると、従業員は、病気やけがで就労できない場合に有給の病気休暇を取得する権利が認められています。また、病気の家族または世帯員を介護するために有給の介護休暇を取得することもできます。

この2つの手当は同じ受給資格で適用されます。受給資格は、フルタイム従業員の場合、最大10日間となります。パートタイム労働者には日割り計算が適用され、臨時従業員には適用されません。

最低賃金

オーストラリアは最低賃金が高く、生活の質の高さにつながっています。雇用主は最低賃金要件を遵守する必要があり、詳細は以下のとおりです。

  • 21歳未満の従業員: 時給9.13ドル(AUD)

  • 21歳以上の従業員: 時給19.49ドル(AUD)

時間外労働手当

NESによれば、オーストラリアの労働時間は週38時間までと規定されています。時間外労働手当は、業種や契約内容によって異なる場合もありますが、通常、雇用主は標準給与よりも高い率で時間外労働手当を支給しています。

一般的には、次のように算出されます。

  • 時間外労働の最初の2~3時間:150%の支給

  • それ以降の時間外労働: 200%の支給

以下の場合、時間外労働手当は変動します。

  • 土曜日と日曜日

  • シフト勤務者

  • 祝祭日

オーストラリアで新しい人材を雇用する際にかかるコストの詳細を確認するには、無料の従業員コスト計算ツールをご利用ください。

オーストラリアの労働者にとって魅力的なその他の福利厚生

法定福利厚生は法的義務です。しかし、オーストラリアの人材は需要が高いため、優秀な人材をチームに誘致するのであれば、最低限の福利厚生では奏功する可能性は低いでしょう。

現地市場に合わせた戦術的なアプローチは、オーストラリアではそれほど高く評価されない標準化されたグローバルな福利厚生に無駄な費用をかけることなく、優秀な人材を引き付け、定着してもらうことに役立ちます。

RemoteのAPAC雇用専門家チームは、オーストラリアで就労する従業員向けの福利厚生制度に追加すべき特典の一覧表をまとめました。

(地域市場ごとに福利厚生制度をカスタマイズすると負担になりそうですが、RemoteのようなEORはこのプロセスを簡素化、管理、自動化できるため、その心配はありません)

健康保険

健康保険プランを提供する企業は、特に近年の増税後、オーストラリアの労働者にとって魅力的に映ります。オーストラリア政府は、メディケア追加課税(MLS)を導入しました。

この賦課金は、高所得者に私的医療保険への加入を促し、公的医療制度の負担軽減につなげることを目的としています。これは、充実した福利厚生の提供で競争力を高めようとする雇用主にとっても好機です。

Remoteでは、従業員が保険に関してさまざまな選択をできるよう、各国の雇用主に健康保険の提供を促しています。オーストラリアでは、こうした福利厚生は期待されていませんが、現地の大手企業は、健康保険を提供して、優秀な専門人材を引き付け、確保しています。

包括的な医療保険パッケージの提供は、オーストラリアの労働者にとって大きな魅力になります。また、雇用主としての配慮と取り組み姿勢をさらに示すには、医療保険の提供を他のサービスとともに充実させることを検討してもいいでしょう。

  • 歯科保険

  • 眼科保険

  • メンタルヘルスケア手当(瞑想、ヨガ、セラピー手当など)

  • ジムまたはヘルスクラブの会員権

生命保険

老齢退職年金制度は少なくとも最低限の生命保険と障害保険を提供することが義務付けられていますが、それ以上の保障を提供する方が一般的です。そのため、より詳細な保障が付いた個人向け保険プランの提供は大きな魅力になります。

また、雇用主は団体生命保険プランを大幅な割引で支払うことができます。このオプションは保険料が下がり、雇用主にとって費用効果が高くなります。

自己啓発プログラム

学習や個人のキャリアアップを支援する福利厚生は、非常に一般的であり、オーストラリアの従業員の間で次第に人気を集めています。

賞与や昇給のような明確な金銭的福利厚生から優先度が移り変わる中、学習・能力開発プログラムは、チームの成長に投資する用意があるという強いメッセージを発信するものです。

他の雇用主との差別化を図るには、従業員のキャリアアップやプライベートの充実を支援する福利厚生の提供を検討するといいでしょう。オプションの例は次のとおりです。

  • 学習休暇または受講費用に対する経済的支援

  • 個人の学習・能力開発予算

  • メンターシッププログラム

  • 企業またはリーダーシップのコーチング

個人の成長や新しいスキルの習得を支援することで、将来にわたって優秀な人材に定着してもらうことができます。

社用車

オーストラリアにおいて、金融やITなど給与水準の高い特定の業界では、社用車と燃料手当の支給が一般的です。業界によっては、こうした補足的な福利厚生を提供することで、現地の大手同業他社に対する競争力を確保することも考えられます。

育児手当

オーストラリアの保育料は非常に高額です。従来、雇用主は育児に関して従業員を福利厚生でサポートすることはありませんでした。しかし、子供や孫のいる労働者には、経済的支援(あるいは育児の柔軟性を高められるような制度)は大いに歓迎されるはずです。

オーストラリアでは、フレックスタイム制を導入し、ワークライフバランスを重視する海外雇用主の競争力が際立っています。オーストラリア人の親が仕事量や家事分担を管理しやすくなるよう支援する用意があると示すことができれば、それに応じて働く親たちのロイヤルティやモチベーションを高めることができます。

休暇の追加

労働者は、柔軟性とライフスタイルに関連する福利厚生を高く評価します。特にオーストラリアでは、旅行を高く評価する文化が根付いています。有給休暇の追加付与は多くの労働者にとって魅力的です。法定年次休暇はわずか20日であるため、多少の休暇を追加しても、生産性に大きな影響はありません。

有給休暇を追加する予算がない場合は、1日分の給与と引き換えに休暇を「購入」できるオプションを従業員に提供することが、オーストラリアでは人気の福利厚生となっています。

さらに、南半球の国はほぼ12月下旬から1月上旬にかけて休暇期間に入り、多くの職場が1週間から2週間休業します。この時期を休暇として追加すると、現地の従業員には非常に価値があります。この期間は、多くの場合、グローバル従業員同士で埋め合わせることになります。つまり、北半球のチームメンバーが通常勤務を行って不足を補ってくれるのです。

その逆もあります。オーストラリアの従業員が、欧米で夏休みとして人気のある7月と8月に休暇を取ることはほとんどありません。

現地従業員を引き付ける価値の高い福利厚生

人材誘致に投じる莫大な予算がない中小企業でも、悩む必要はありません。現地の人材にとって魅力的かつ低コストで、高額な費用のかからないさまざまな福利厚生を提供することは可能です。オーストラリアの応募者にとって魅力的な福利厚生には、次のようなものがあります。

  • ボランティア活動時間

  • 誕生日休暇

  • 在宅勤務手当

  • 食費と旅費

  • ジム会員権

応募者の心身の健康や満足度を高められる特典の提供は、長期的に見てプラスになります。特に、温暖な気候のオーストラリアでは顕著です。オーストラリア人はアウトドアを楽しみ、運動習慣も身に付いています。プールの会員権やソーシャルスポーツのスポンサーシップといったスマートな特典は一般的ですが、島国ならではのものです。こうした特典は、最終的に従業員の満足度や業績、ロイヤルティを高めることになります。

予算内で福利厚生を提供する方法について詳しくは、Remoteの中小企業向け福利厚生ガイドをご覧ください。

柔軟な勤務スケジュール

家庭とオーストラリアの労働力に関する最近の調査では、オーストラリア人の67%が定期的に在宅勤務をしていることが明らかになりました。この割合は、コロナ禍以前はおよそ42%でした。

労働者が勤務地や働き方に自由を求め、その価値を重視し続ける中、従業員福利厚生としての柔軟な働き方の提供は、多くの雇用主がひしめく競争の中で、他社との差別化を図ることができるシンプルな施策です。

国際従業員向けの福利厚生を設定して管理する方法

特にグローバル雇用の経験がない人事マネージャーにとって、従業員のリモート福利厚生の管理や設定は大きな負担です。

法定給付の遵守を怠ると、金銭的なペナルティや法的問題に発展する可能性があるため、常に遵守しておく必要があります。また、オーストラリアで就労する従業員にとって魅力的な従業員福利厚生制度を設計することで、現地の他の雇用主に対する競争力を維持する必要があります(同時に、他国で就労する従業員向けの制度との公平性も維持する必要があります)。

こうした課題には、EORのサポートが必要です。

Remoteのようなグローバルな雇用パートナーと提携することで、リスクを最小限に抑え、コンプライアンスを確保する理想的なソリューションを利用できるようになります。Remoteの専用ソフトウェアは、直感的で使いやすく、グローバルな人事、法務、財務の専門家で構成される大規模なチームがサポートし、国際雇用のニーズに責任を持って対応します。

Remoteは、人事プロセス全体を簡素化すると同時に、優秀な国外の人材を最大限に活用してビジネスの成長を支援します。

チームの成長を促すスマートなグローバルHRソリューション

オーストラリアの労働法や法律は多層的で複雑化しているため、雇用主にとってコンプライアンスの維持にはリスクが伴い、時間がかかります。

Remoteは次のようなEORサービスを通じて、企業に代わりこの課題に対応します。

  • すべての法規制と法定福利厚生を遵守して管理する

  • 優秀なグローバル人材を引き付ける、魅力的な国別福利厚生制度を構築する

グローバルEORとの提携は、福利厚生の管理に役立つだけではありません。こうした提携によって、次のようなことも可能になります。

  • 全世界のリモート人材をスピーディにオンボーディング

  • 国内に現地法人がなくても、コンプライアンスを確保しながら雇用

  • 現地の労働法の遵守

  • 国際的に給与を支給

  • 休暇を管理

  • 法的責任を軽減し、ペナルティや罰金を回避

  • グローバルHRを一元管理

(これが自社に最適なソリューションかどうか確信が持てず、EORに関する背景情報が必要な場合は、Remoteの「Employer of Record(EOR)を利用すべき場合」ガイドをお読みください)。

Remoteは、完全所有の現地法人と各国の現地専門家が揃った、グローバル雇用を支援する最適な選択肢として、安心してご利用いただけます。

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RemoteのグローバルHR専門家が、世界の優秀な人材を引き付け、維持するために、現地の状況に合わせた法令遵守のプログラム構築に関する実践的なアドバイスを提供します。

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