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お客様が海外で労働者を雇用している場合、「恒久的施設」または「PEリスク」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。しかし、恒久的施設とは何でしょうか。また、分散型チームを持つ企業は、なぜ注意を払う必要があるのでしょうか。
「恒久的施設」とは、ある国に継続して課税可能な存在を有する企業を指す税務用語です。「実体要件」と同じ意味です。いずれの場合も問われるのは、その国で課税対象となるほどの十分な実体が貴社にあることを示す指標の有無です。
一般に、企業は、従業員を雇用している国で恒久的施設を持つことを避けようとします。それは、恒久的施設を持つことによって、その企業には、その国で法人税を納め、その他のコンプライアンス基準を満たす義務が生じるからです。
恒久的施設にはいくつかの種類があるので、これらについて知っておく必要があります。貴社はそのいずれかに該当する可能性が高いと思われます。
固定された事業拠点は、最も一般的な恒久的施設の形態です。これは、事業所、工場、作業場など、固定の有形な物理的事業拠点を持つことを意味します。
基本的にリモートで事業を営んでいるとしても、その国に物理的な場所を置いている場合は、固定された場所にある恒久的施設とみなされます。
海外子会社が自動的に親会社の恒久的施設になるわけではないという点に注意が必要です。子会社が親会社の恒久的施設と判断されるのは、その子会社が親会社の従属代理人を務める場合のみです。
代理型の恒久的施設の場合、企業はその国に自社のために働く従属代理人、従業員、または事業体を有しています。
例えば、リモートの企業が別の国に販売代理店を置き、その販売代理店が、取引成立や契約締結に関する業務を処理しているというケースを考えてみましょう。これは代理型の恒久的施設に分類されます。
代理型恒久的施設の条件は国によって異なりますが、コンプライアンスを維持するためには、現地の税法および国際租税条約について調査を行うか、あるいは専門家に相談することが重要です。
ある国で建設または据え付け工事に従事する企業は、建設工事またはプロジェクトベースの恒久的組織を設けることができます。事業活動が一定期間以上継続した場合には、その国の税法または協定に基づいて恒久的施設とみなされる可能性があります。
バーチャルな恒久的施設も恒久的施設と同様に取り扱われます。呼称の「バーチャル」という部分は、その企業がその国においてプレゼンスを確立する方法を単に表しているに過ぎません。
たとえその企業の代表者がその国に物理的には一度も行ったことがなくても、事業を行う固定された場所をその国に持っているという場合は、恒久的施設が非常に複雑になり得る理由の一つです。これは、国によって法律上の取り扱いが異なる分野の一つです。
ただし、バーチャル施設のPEリスクを軽視するのは慎重さに欠けます。各国は、リモートワーク時代の恒久的施設法施行に関して、ますます厳格な姿勢を示すようになっています。
国境を越えた事業活動であっても、恒久的施設が成立する可能性があります。そのため、リモート企業は、納税義務を明確にし、コンプライアンスを維持し、自社の事業に影響を及ぼす可能性のあるリスクを管理するために、恒久的施設が何を意味するのかを理解する必要があります。
複数の国に恒久的施設を持つ企業は、特殊な納税義務を負います。納税義務や二重課税が生じる可能性があります。例えば、お客様は一つの所得に関して、2つの異なる地域で課税されるかもしれません。
恒久的施設に関する法律を理解していれば、貴社は国際的な規制を常に遵守することができます。事業を営む国の現地税務当局が定める要件や報告義務を遵守するために、前もって事業形態を調整する準備がしっかり整うので、罰金や制裁といった法的ペナルティを回避し、主要市場で事業を継続することができます。
恒久的施設を熟知することは、グローバルな事業拡大に付随するリスク、例えば、財務、法務、業務上の問題点などを見極め、これらのリスクを軽減する上で役立ちます。同時に、節税効果が高く持続可能な国際ビジネスをプランニングする上でも有益です。
固定の物理的拠点を持たない企業は、恒久的施設特有の問題に対処する必要があります。以下にその一例を示します。
オンラインストアでの販売など、デジタルな業務やサービスに付随するリスクの把握は、リモート企業がぶつかるハードルの1つです。貴社が他国において事業者としての実体を持つように見える場合、バーチャルな機構が意図せず恒久的施設とされる可能性があります。
各国には独自の恒久的施設に関する法律や規制があります。リモート企業が、コンプライアンスを維持するためにこれらの規則をすべて理解し、対応することは特に難しく、当然時間もかかります。リモートワーカーの分類を誤るといった些細な見落としでも、大きなペナルティを科される可能性があります。
従業員の誤分類を避ける最善の方法をご存じですか。Remoteの誤分類リスク判定ツールは、リスクレベルのチェックに大変役立つツールです。
従業員が世界中に分散している場合、税制や租税条約への対応が難しくなると考えられます。各国の税法に精通したRemoteなどの専門家から助言を受けたり、これらの専門家と提携したりする方法をご検討ください。全世界でコンプライアンスを確保し、リスクを最小限に抑えることができます。
恒久的施設の定義は、場所によって若干異なります。企業が正しく分類されているかどうかを判断する基準は国によって異なります。とはいえ、ほとんどの国では、企業のステータスを判断する際に似たようなガイドラインが使われています。恒久的施設と判断される要因をよく理解するために、次の質問に目を通してください。
企業は、その国に固定された事業拠点を構えていますか。
この場合、固定された住所は、必ずしも物理的な住所を意味するわけではありません。その会社が事業所を持っていなくても、他の事業活動と同じように、何らかの登録が固定された事業拠点と判断される場合もあります。このリモートワークの時代に、固定された事業拠点に関する規則を理解することは難しいかもしれません。
その国で、誰かが日常的に会社の代理人として業務を遂行していますか。
つまり、その国に、その会社を代表して意思決定権を行使する人がいるかどうかです。これは、パートナーシップや投資のような業務を担当する経営幹部だけを指すわけではありません。商談をまとめ、契約書に署名する営業担当者も、恒久的施設成立の要因になり得ます。
その国にいる自社の従業員に対して、その会社はどれだけ強い監督権を行使していますか。
ここは判断の難しいところです。企業は、契約社員の分類だけでなく、従業員との関係についても認識しておく必要があります。企業は、Employer of Record (EOR)と協力することにより、こうしたリスクのいくつかを防ぐことができますが、現地のグローバル雇用パートナーに相談し、PEリスクから身を守る方法を理解しておくことをお勧めします。
企業は、その国においてどのような形で収益を上げていますか。
企業がある国で収益を上げたとき、一般にその国はその収益の一部を要求します。租税条約は、企業に納税義務が生じる場所を定めていますが、恒久的施設ではこれらの規則の運用が変わる場合があります。その国にいる従業員が、その企業の継続的収益に直接貢献している場合、これらの活動は恒久的施設を成立させる可能性があります。
企業は、その国でどれだけの期間にわたって事業を営んでいますか。
恒久的施設は一般に、代表者が契約締結のためにその国に時折出張するだけでは成立しません。しかし、自社の従業員が旅行者であって居住者ではないという理由だけで、企業が自由に海外で事業を営むことができるわけではありません。その国で事業を展開する期間が長くなるほどPEリスクは高まり、組織に対する当局の監査も厳しくなります。
企業は、その国の中で戦略的決定を下していますか。
例えば、取締役会はその国で定期的に会議を行っていますか。上級管理職が集まることは恒久的施設の指標になり得ます。Employer of Record (EOR)を通じて上級役員レベルのエグゼクティブや取締役を雇用する場合、取締役会の開催地は最重要事項として考慮すべきです。
国境を越えて従業員を採用するにあたって法令遵守を維持するために、このチェックリストをご確認ください。
共同雇用と恒久的施設は同じではありません。共同雇用とは、2社の雇用主が同じ従業員に対して同時に責任を負う状況を指します。幸いなことに、共同雇用はPEリスクを決定づける要因ではありません。
Employer of Record (EOR)との協力関係は、PEリスクに直接的な影響を与えません。また、EOR との関係が、必ずしも共同雇用にあたるわけでもありません。Employer of Record (EOR)を使用する企業のほとんどは、その国に事業所を持っていないため、それだけで恒久的施設の定義からは少々外れます。
しかし、恒久的施設に関する規則を回避しようとするEmployer of Record (EOR)には十分注意してください。お客様が意図的にコンプライアンスを無視して事業を営んでいることが発覚した場合には、多額の罰金や、その国での事業活動禁止を含む重いペナルティが科されるおそれがあります。例えば、Employer of Record (EOR)が、お客様の従業員を、実際に勤務している国とは別の国で雇用することを提案してきた場合、お客様は重大なリスクにさらされかねません。
規則に従って事業を営みながら、PEリスクを回避してください。コンプライアンスを維持するために法制度に則って事業を運営することは、法令違反を隠し通そうとするよりも常に望ましい姿勢です。
基本的に、恒久的施設を持つ企業は、その施設が設立された国で法人税を支払う義務があります。その国で事業を営む企業に対する新たな規制といった別の要因も関係してくる可能性はありますが、恒久的施設に関して重要なのは主に課税の問題です。
企業は、同じ所得に対して2つの国で二重課税されないように注意する必要があります。一旦、恒久的施設と判断されると、二重課税の回避が困難になる場合があります。初めにPEリスクを理解し、計画を立てておくことが大変重要である理由はそこにあります。恒久的施設として取り扱われることが避けられない場合は、明確な移転価格の設定が、その国で発生した収入源の判断に役立ちます。
複数の国で従業員を雇用する企業は特に注意が必要です。各国は恒久的施設(PE)に関して独自の基準を運用し、それを自国の税収に結びつけています。そのため、PEリスクの管理が不十分な企業は、複数の国で恒久的施設として認定されるリスクを抱えることになります。
恒久的施設と判断されないための一番安全な方法は、その国の具体的な法律の理解を助けてくれるなるグローバル雇用ソリューションを利用することです。PEリスクに定型的な解決策はありません。
恒久的施設の判断は常に変化しています。これらの判断は事実に基づいて下され、主観的なものではありません。現地当局は何時でも基準を変更できるため、企業は一度解決すれば終わりというわけにはいきません。
第三者に依存するパートナーよりも、その国に現地法人を所有するパートナーと提携する方が常に安全です。現地法人を持たないEmployer of Record (EOR) その他のグローバル雇用ソリューションプロバイダーは、他社にサービスを外注しなければなりません。また、それらの企業は、PEリスクを回避するために必要な専門知識や経験を持っていない可能性があります。たとえ複数のパートナーが存在し、それによって当局がPEリスクを判断しづらくなる場合でも、単一の窓口と専門知識があれば、コンプライアンスの維持は格段に容易になります。
「所有法人型とパートナーシップ主体型のグローバル雇用」も併せてお読みください。
企業にとって一番重要なのは、その企業の本国と、その企業が事業を営みたい国が締結している租税条約の内容を必ず理解しておくことです。租税条約を遵守するための最善の方法は、自社で現地の法的代理人を置くこと、またはその国に法人を持つグローバル雇用ソリューションと提携することです。
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