フィリピン 11 min

フィリピンにおけるリモートワーカーの雇用と給与支給方法

執筆者: Nadia Vatalidis
Nadia Vatalidis

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リモートワーカーを雇用するなら今が最適な時期です。そして、多くの優秀な人材が集まるフィリピンは、雇用主にとって魅力的です。規制により海外従業員の雇用や給与支給が複雑なのは確かですが、

何の情報も持たずに雇用プロセスを開始する必要はありません。このガイドでは、フィリピンにおける労働法、税務要件、雇用で期待される条件など、フィリピンのリモートワーカーの雇用について知っておくべきことをすべて説明しています。このガイドを読めば、世界のどこからでもフィリピンの労働者を雇用できるようになります。

外国企業がフィリピンの労働者を雇用すべき理由

フィリピンから労働者を雇うべきか他の国から雇うべきか迷っている場合は、以下に挙げた要素を考慮してみてください。

高度な英語スキル

フィリピンは1898年から1946年まで米国の植民地でした。現在でも、英語はタガログ語と並んでフィリピンの公用語となっています。

フィリピン人のプロフェッショナルは英語理解力が高く、フィリピンの英語能力指数は113か国中20位にランクインしています。

フィリピンと西洋との深い関わり合いの歴史がもたらした産物は、フィリピン人の高い言語能力だけではありません。フィリピンの文化は「東洋と西洋の融合」と呼ばれることもあるほど、西洋との類似点が多く見られます。

そのため、フィリピンと地理的に離れていたとしても、職場での人間関係を円滑なものにし、コミュニケーションを簡単に取ることができます。

English proficiency in the Philipppines

熟練労働者

マネージャーなら誰でも知っているとおり、理想的な従業員に必要なのは言語能力だけではありません。フィリピン人は言語能力に限らず、多様なスキルを持っているという素晴らしい事実がわかっています。

フィリピンの労働者は優れた労働倫理を持っていることで知られ、タイムゾーンの違いがある環境での労働に対しても積極的です。

LinkedInの調査では、フィリピン人のプロフェッショナルが過去10年間の間、さまざまな産業において、ハードスキルとソフトスキルの強化を優先していたことがわかりました。

フィリピン人労働者を雇用する方法

フィリピン国外で事業を行いながら、フィリピン人を海外従業員として雇用している企業はすでに多く存在します。これらの外国企業は、以下の3つの方法でリモートスタッフに給与を支給しています。

  1. 自社法人経由

  2. EOR経由

  3. 契約社員として給与支給

これらの方法について、以下でご説明します。

フィリピンで法人を設立

貴社自身ですべてを処理したい場合は、自社法人を通じてフィリピン人従業員に給与を支給できます。これを行うには、フィリピンに支社を設立してフィリピン労働雇用省(DOLE)から雇用許可書を取得する必要があります。

貴社自身ですべてを処理するので、最大限の裁量で管理できます。しかし、ミスをした場合、税務上や法律上の問題に直面するリスクも高くなります。

この方法は、すでに現地に関する知識を有しているか、有するための手段を持っている大企業に最適です。

EORと提携する

法人を設立するのではなく、EORを利用することで、フルタイム従業員に給与を支給することもできます。

EORが貴社に代わって雇用主として機能し、フィリピン人チームの給与、福利厚生、税金の処理を行います。労働者を雇用するのは貴社ですが、人事管理業務や現地の法令遵守に対応するのはEORです。

EORとの提携がどのように機能するのかについては、後ほど詳しく説明します。

契約社員として給与を支給

正社員として雇用する必要がない場合は、契約社員として雇用できます。この場合は、Remoteの契約社員管理ソリューションを利用して契約社員に給与を直接支給できます。

このソリューションでは、契約書、請求書、税務書類などを一元管理できるプラットフォームを企業に提供します。契約社員のスマートなオンボーディングを実施するための機能や、現地の規制遵守をサポートする機能など、さまざまな機能が用意されています。

しかし、フルタイム社員を契約社員であるかのように扱い、給与を支給しようとすることは避けなければなりません。このようなことを行った場合、貴社が誤分類に伴う責任を負う可能性があります。

フィリピンのリモートワーカーに給与を支給する際に使用する通貨

フィリピンでは、フィリピン語の「ピソ」としても知られるフィリピン・ペソが使用されています。1ペソは平均して約2米セントの価値があり、一般的に「P」と省略して表記されます。フィリピン国外の企業は、ピソに換算してからフィリピン人労働者に給与を支給する必要があります。

フィリピンの税率区分

フィリピンの税法は、多くの面で米国の税法と類似しています。類似点には、課税が免除される税率区分、累進税率の区分、免税、控除があります。

フィリピンに常住しているとみなされる労働者は全員、税率区分に従ってフィリピンで税金を払わなければなりません

フィリピンにおける税率区分は以下の通りです。

  • ₱0-250,000: 0%

  • ₱250,000-400,000: 15%

  • ₱400,000-800,000: 20%

  • ₱800,000-2,000,000: 25%

  • ₱2,000,000-8,000,000: 30%

  • ₱8,000,000+: 35%

これらの税率区分は所得税のみに適用され、ソーシャルセキュリティの支払額やその他の予想される差し引きには適用されません。フィリピンの雇用主は、所得税を従業員に代わって源泉徴収する必要があります。

フィリピンにおける給与の課税対象額

フィリピンでは、従業員の給与の一部が課税対象となります。フィリピン人リモートワーカーの給与に対する給与所得税の適用について、知っておくべきことをご説明します。

フィリピンで課税対象となるもの

収入が最低賃金を超える場合、労働者は、少なくとも収入の一部に課される所得税を支払う必要があります。いかなる金銭的報酬も、上記で示した最初の税率区分の金額を超える場合、所得税が課税されます。

しかし、福利厚生の中には給与の一部とみなされず、所得税が課されないものもあります。

フィリピンで非課税となるもの

フィリピンにおける賃金および給与には、完全に非課税となるものがあります。たとえば、フィリピンで免税対象となるものには以下が含まれます。

  • 最低賃金の給与

  • 休日出勤手当と賞与

  • 危険手当

  • 時間外労働手当

  • 夜勤手当

これらは、所得税と源泉徴収の対象となりません。さらに、収入が最低賃金の場合、フィリピン人労働者は税金を一切申告する必要がありません。

フィリピン人リモートワーカーの場合、以下も免税対象となります。

  • 保険料

  • 従業員自身とその子供に対する人的控除

  • 現金に換算した未取得の休暇

  • マネージャー向けの住居や社用車などの非課税福利厚生

海外従業員雇用チェックリストをダウンロード

国境を越えて従業員を採用するにあたって法令遵守を維持するために、このチェックリストをご確認ください。

A tablet displaying a global payroll platform for distributed teams.

フィリピンで課税対象となる日当手当

フィリピンでは、従業員の業務で発生する諸経費の一部を補助するための手当が1日単位で支給され、これを日当手当と呼んでいます。雇用主が日当手当を支給することで従業員のモチベーションは向上しますが、適切に実施することが重要です。

最も重要な点は、手当が課税対象となるかどうかは、その手当が何を補助しているかによって決まるということです。

もし、日当手当が従業員の仕事の充実度を高めている場合や、大きな価値をもたらしている場合は、課税対象となる可能性が高いです。この場合の日当手当は福利厚生扱いになります。福利厚生の例として健康保険や従業員ストックオプションが挙げられます。これらは35%の税率で課税されます。

しかし、日当手当の補助対象が事業経費に厳格に限定されている場合は、課税対象となりません。この場合の日当手当は、最低限の補助を提供しているため、少額福利厚生として知られています。この例として以下が挙げられます。

  • 社内提供の昼食

  • 軽食

  • 未取得の休暇を現金に換算して支給

  • 制服と衣類の手当

  • 洗濯手当

少額福利厚生の一部は、一定金額を超えると課税対象となるためご注意ください。

フィリピンにおける手当と払い戻しの違い

フィリピンでは非課税報酬に関する条件が緩やかですが、課税控除は存在します。手当は福利厚生とみなされるため、フィリピンの福利厚生税の対象なる場合が多いです。

ただし例外もあり、たとえば雇用主の便益のために付与される福利厚生がそれにあたります。インターネット接続のより安定した場所に引っ越すために、リモートワーカーに転勤手当が支給される場合、この手当は雇用主の便益のための福利厚生とみなされます。そのため、非課税となります。

一方で、払い戻しは事業経費の返済とみなされます。雇用主の二重課税を避けるため、フィリピンではこれらの払い戻しは非課税です。

フィリピンで雇用主に義務付けられている給与所得控除

フィリピンで義務付けられている給与所得控除は多くありません。義務付けられている控除は以下の通りです。

  • ソーシャルセキュリティ:フィリピンのソーシャルセキュリティの支払額を、雇用主が従業員に代わって源泉徴収します。

  • 所得税:大多数の国と同様、雇用主は従業員の所得税を源泉徴収します。

  • フィリピン健康保険公社(Philippine Health Insurance Corporation):フィリピンは、給与の3%を毎月負担することを労働者に対して義務付けることで、国民健康保険プログラムを運用しています。この金額は従業員と雇用主が分担して負担しています。

  • 住宅開発相互基金(Home Development Mutual Fund):この基金は通称Pag-IBIGとしても知られ、住宅ローンや住居の提供を行っています。雇用主と従業員は毎月200ペソを分担して負担することが義務付けられており、その拠出金によって運営されています。

Payroll deduction in the Philippines

link to フィリピンにおける従業員の福利厚生: 理解しておくべき点
16 min

フィリピンにおける従業員の福利厚生: 理解しておくべき点

企業がフィリピンの福利厚生制度を理解するのに役立つ専門ガイド。

フィリピンの最低賃金

経済状況や生活費の違いを反映するため、フィリピンでは国の最低賃金が地域によって異なり、地域レベルの地域三者賃金生産性委員会(RTWPB)が最低賃金を決定しています。

たとえば、マニラ首都圏では日額最低賃金は1日あたり₱500.66です。

しかし、農業従事者か非農業従事者かによって最低賃金は異なります。

また、労働者は以下を取得する権利を持っています。

  • 時間外労働手当

  • 夜勤手当

  • 休息日

  • 休日出勤手当

  • 解職手当

  • 年金

フィリピンの時間外労働手当の金額

フィリピンでは通常、時間外労働手当として従業員の基本時給の125%が支給されます。従業員の1日の労働時間が8時間を超えた場合は常に、時間外労働手当を支給しなければなりません。従業員が休日または休息日に労働したときに時間外労働を行った場合は、休日出勤手当の130%が支給されます。

フィリピンにおける地域労働法

フィリピンの労働法は比較的複雑です。リモートワーカーについて規定した重要な労働法をご紹介します。

労働者の分類

フィリピンの従業員は、主に以下の4つに分類されます。

  • 正社員

  • 臨時従業員(パートタイムまたは臨時)

  • プロジェクトワーカー(個人事業主に相当)

  • 季節労働者(主に農業)

解雇理由

正社員を解雇できるのは、正当な理由がある場合のみです。つまり、雇用主は従業員を解雇するだけの十分な理由があることを証明しなければなりません。

雇用終了の少なくとも1か月前までに、従業員に対して解雇の予告をする必要があります。

正当とみなされる解雇理由には、重大な不正行為、深刻な職務怠慢、犯罪行為や違反行為が含まれます。

報酬

従業員には、1か月に2回以上給与を支給しなければなりません。

解雇された従業員には、1か月分の給与に相当する解職手当を支給しなければなりません。

夜勤勤務(午後10時から午前6時の間)をする従業員には、夜勤手当として、基本給の110%を支給しなければなりません。

労働時間と労働条件

フィリピン労働法(Labor Code of the Philippines)では、1週間の標準労働時間は「1日8時間労働を週5日」と定められています。医療従事者は、この標準労働時間を超えて労働することが許可されています。

急務でない限り、従業員に時間外労働を強制することはできません。

食事休憩は報酬の対象外ですが、従業員には60分以上の食事休憩を提供する必要があります。また、6日間連続で勤務したあとは、従業員は25時間の休息を取らなくてはなりません。

さらに、雇用主はフィリピンの雇用法に必ず従う必要があります。フィリピンの雇用法には、1995年反セクシュアル・ハラスメント法(Anti-Sexual Harassment Act of 1995)、在宅勤務法(Telecommuting Act)、2012年データプライバシー法(Data Privacy Act of 2012)が含まれます。

休日と休暇

大多数の国と同様に、フィリピンにも何日間か祝日があります。祝日分の給与は、全従業員に支給する必要があります。

法律上、従業員が1年間労働した場合、雇用主はその従業員に対して1か月分の給与に相当する額を支給しなくてはなりません。この手当は13か月手当として知られています。この手当の支給期限は毎年12月24日です。

過去12か月のうち6か月以上労働している場合、従業員は育児休暇を取得する権利があります。産前は2週間以上、産後は4週間の休暇を取得できます。

フィリピンにおける契約社員の給与支給方法

プロジェクトが短期間である場合や、その範囲が限定されている場合は、フィリピンの契約社員の雇用を検討してもよいかもしれません。契約社員には社員と同じ労働法は適用されないため、契約社員の雇用のほうがシンプルです。

Remoteの契約社員管理ソリューションを使えば、給与から税金を源泉徴収することなく給与支給を行えるため、フィリピンの税法について頭を悩ませる必要がありません。

しかし、自力で契約社員を雇用する場合、契約社員の誤分類のリスクがあります。従業員の分類方法について、フィリピンでは法律で厳格に定められています。社員のような待遇を受けている労働者を契約社員として分類していた場合、未払いの税金で訴えられたり、罰金を科せられたりする可能性があります。

雇用した契約社員を昇進させたい場合も、従業員の分類は問題になります。Remoteを利用すれば、契約社員の分類プロセスや、契約社員から社員への転換がシンプルになります。

フィリピンにおけるリモート従業員の給与支給方法

フィリピンのリモート従業員に給与を支給する方法として、以下の2つがあります。

  1. フィリピンで独自の現地法人を設立する。

  2. Employer of Record (EOR)として機能するグローバル雇用ソリューションと提携する。

EORは対象国で法人を所有しているため、スタッフの雇用に必要な文書作成や法的手続きに対応できます。そのため、企業が自ら海外の事務手続きに対応しなくても、非常に優秀な人材を雇用することができます。

RemoteのようなEORと提携することで、フィリピンでの人材雇用や給与支給が簡単に行えるようになります。また、Remoteが法的事項に対応するため、企業は雇用プロセスの規模を迅速に拡大できます。EORパートナーの候補を比較する方法について詳細をご覧ください。

Remoteを使用してフィリピンのリモートワーカーに給与を支給

フィリピンには優秀な労働者が豊富にいますが、契約を結び始める前に、いくつかの規則や規制をしっかりと理解しておく必要があります。

Remoteを利用すれば、このプロセスを難なく進められるのでご安心ください。

Remoteには現地の法律や慣習、従業員の期待に関する知識が蓄積されており、貴社はそれを活用して現地の優秀な人材を引き付け、維持することができます。給与の処理から地域密着型の福利厚生制度の確立まで、Remoteがあらゆることに対応します。優秀な人材を見つけたら、そのあとの処理はRemoteにお任せください。人材の雇用や管理が簡単に行えるようにサポートいたします。

ご利用がお決まりなら、今すぐご登録いただくと、数分で従業員や契約社員のオンボーディングを開始できます。

ご不明点がございましたら、お問い合わせください。当社がサポートいたします。

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