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フィリピン人の労働者を雇うことは、グローバルタレントの市場を活用しようとする企業にとって、非常に多くの利点があります。フィリピン人は学習が早く、適応力があり、献身的です。ほとんどのフィリピン人は英語に精通しており、この東南アジアの労働者の勤勉さと忠誠心は世界的にもよく知られています。
フィリピンの生活費は、他のグローバルハブと比較するとかなり低いといえます。通常、アメリカの半分程度です。
チームをグローバルに拡大しようとしている企業であれば、他国の従業員を雇うことが、決して容易ではないことがすぐにわかるでしょう。フィリピンのような外国でどのような法定の福利厚生が必要となるか(ならびに報酬に対する現地の期待値)を理解することは、重大な課題となる可能性があります。
フィリピン人の雇用主としての義務を簡単に理解できるように、説明していきます。世界中に事業所を持つEORとして経験豊富なリモートのチームは、(フィリピンを含む)複数の国にまたがる福利厚生制度の管理を、競争力を維持し法令に準拠しながら簡単、安価かつ大規模に行うことができます。
フィリピン人従業員に関するこの福利厚生ガイドでは、企業が提供しなければならない義務的な福利厚生と、優秀な人材を惹き寄せるために企業が提供できる追加的な特典について説明します。フィリピンにおける雇用について、重要な点を以下に挙げます。
フィリピンでは誰が福利厚生を受けられますか?
法律により企業が提供しなければならない従業員福利厚生
フィリピンで優秀な人材を惹き寄せるための追加的な福利厚生
国際的な従業員のための福利厚生の構築と管理の方法
(フィリピンでの雇用を開始する準備はできていますか?すぐに雇用を開始するのに役立つ詳しい情報は、Remoteのフィリピンにおける従業員・契約社員の雇用ガイドでご確認ください。)
フィリピンの労働法は、労働雇用省によって管理されています。フィリピンの従業員福利厚生はすべて、正規、プロジェクトベース、季節型、非正規の4種類の雇用契約うち、どの雇用契約が行われているかによって異なります。
雇用契約の性質によって、法律や規制が異なる場合があります。ただし、法律では、どのような雇用契約でも雇用の安定を認めています。
労働時間、休憩時間、時間外労働、年齢、夜間労働、休日、休暇に関する一般的な最低雇用条件は、フィリピン労働法第3巻に規定されています。管理職クラスの従業員、現地の人材、その他一部の労働者は、例外とすることができます。
誤分類のリスクを最小限に抑える必要があります
なお、フィリピンでは、契約社員は、法定の福利厚生を受ける権利を有しません。福利厚生や報酬は、企業と契約社員との契約書によって決定されます。
この区分を理解することが重要であり、ここからグローバル雇用が複雑になり始めます。
労働者を従業員とみなすか契約社員とみなすかにかかわらず、立法府は、重要な判断のみを行います。関係性が従業員であるにもかかわらず、法定の福利厚生の提供を怠っていたことが判明した場合、誤分類やそれに伴う罰金またはペナルティの深刻なリスクにさらされることになります。
この概念を理解するための詳しい情報は、従業員の誤分類に関する専用ガイドでご確認ください。
法定の福利厚生(義務的福利厚生とも呼ばれる)は、雇用主が従業員に提供することが法律で義務付けられている権利です。一般的な例として、年次有給休暇、育児休暇、労災保険、有給病気休暇などの福利厚生が挙げられます。
フィリピンでは、雇用主は、次の基金に対する拠出金を毎月支払わなければなりません。
この国営の保険制度は、社会保障制度と従業員福利厚生制度(EC)に基づく福利厚生を提供しています。
ソーシャルセキュリティコミッションが、この制度を運営しています。このコミッションは、政府、雇用主、従業員の代表者で構成される組織です。
社会保険は、民間企業の従業員、自営業者、家事従事者を保険適用対象としています。被保険者の配偶者も、この制度による福利厚生を受ける権利を有しています。
福利厚生には、次が含まれます。
出産手当
傷病手当
年金
障害給付金
給与ローン
生命保険
葬儀助成金
拠出額は、従業員の給与水準によって異なります。一般的に、雇用者(ER)が7.37%、従業員が3.36%を負担します。
PhilHealth(フィルヘルス)は、フィリピンの民間従業員を対象とした健康保険制度の名称です。2021年現在、健康保険制度の月額拠出金の金額は、従業員の基本給与の3.5%です。月額拠出金は、従業員と雇用主が均等に負担します。10,000フィリピンペソが給与の下限で、70,000フィリピンペソが給与の上限です。
PhilHealthは、入院給付金、外来給付金、Z給付金、SDG給付金(以下で説明)を取り扱っています。
Z給付金は、長期入院やより高額治療が必要な患者に提供されます。
SDG給付金には、マラリア、HIV-AIDS、結核、動物咬傷、その他の疾病の治療パッケージが含まれます。
PhilHealthが上記の権利を提供しているため、雇用主には、特定の保険給付金を提供する義務はありません。
その結果、多くのグローバル企業が、フィリピン人従業員への民間医療保険の提供を選択しない可能性がありますが、より専門的な医療を受けられるように(そして、より一般的な治療の待ち時間を短縮できるように)従業員に追加的な医療保険を提供する雇用主も依然として多く存在します。
実際に、健康保険やその他の追加的な保険給付(歯科保険、視力保険、生命保険など)を採用することは、新入社員との信頼関係を築き、フィリピンの競合他社と一線を画す効果的な方法です。
HDMFは、Pag-IBIGファンドとしても知られ、住宅ローンを提供しています。また、フィリピン人が適切な住宅を購入できるよう、資金援助も行っています。
月収1,500フィリピンペソ未満の労働者は、給与の1%をPag-IBIG基金に拠出します。それ以上収入のある労働者は、月給の2%を拠出します。雇用主は、従業員の給与に関係なく2%を拠出しなければなりません。
HDMFへの拠出金の最高額は、合計で200フィリピンペソ(従業員100フィリピンペソ、雇用主100フィリピンペソ)を超えることはできません。
フィリピンでは、従業員の通常の労働時間は、1時間の昼休みを除き、1日最大8時間です。これには労働時間中の短い休憩も含まれます。
もちろん、この通常の労働時間にも例外はあります。延長するかどうかは会社によりますが、以下のすべてのルールが、フィリピン国内のすべての組織に適用されます。
フィリピンの従業員には、連続6日間の労働の後に、連続24時間の休息を取る権利があります。
フィリピンの労働者には、通常休暇と特別休暇の2種類の休暇が与えられます。
有給休暇は12日間です。
特別(非労働)休暇: 特別(日労働)休暇には、ノーワーク・ノーペイポリシーが適用されます。勤務した場合は、報酬が支払われます。年に6回の特別休暇があります。
フィリピンの最低賃金は地域によって異なります。各地域の三者賃金委員会が、1日282~537フィリピンペソの範囲で最低賃金を決定します。
最低賃金の金額は、業種によっても異なります。産業部門は、農業と非農業に大別されます。
従業員が所定の労働時間(8時間)を超えて労働した場合、以下の追加的な報酬が支払われます。
フィリピンの労働法では、午後10時から午前6時の間に働く労働者に夜間労働手当を支払うことが義務付けられています。夜間労働手当は、労働者の通常給与の10%を下回ることはできません。
従業員が通常の勤務日に8時間を超えて労働した場合、平均時給の25%を追加で受け取る権利があります。
従業員は、休息日または特別な休日に勤務した場合、割増賃金を受け取る資格があります。従業員が休息日や特別な日に働く必要がある場合、従業員には日給の30%が追加支給されます。休息日でもある特別な日に働いた場合は、50%が追加支給されます。休日である定休日に働いた場合、従業員には合計260%が支給されます。
13ヶ月分の給与(通称「13ヶ月給与」)は、雇用主が特定の従業員に支払わなければならない法定の要件です。
フィリピンの非管理職従業員は全員、13カ月目の給与を受け取る権利があります。この1カ月分の給与は、12月24日までに支払わなければなりません。従業員の中には、5月と12月の2回に分けて支給を受けることを選ぶ人もいます。
ある雇用主のもとで1ヶ月以上勤務した従業員は、13ヶ月目の給与を受け取る権利があります。勤務年数が1年に満たない場合は、日割りで支給されます。
雇用主は翌年の1月15日までにコンプライアンスレポートを提出し、支払いが行われたことを確認する必要があります。
フィリピンの雇用主は、1年以上勤務した従業員全員に5日間の有給休暇を与える義務があります。これは病気休暇または休暇として使用できます。
保険に加入している従業員は、3日以上入院または自宅療養を余儀なくされた場合、1日あたりの平均賃金の90%以上を受け取る権利があります。3日間の待機期間は、怪我や急性疾患の場合には適用されません。
病気になった従業員には、1年間に120日まで、平均給与日額の90%が支給されます。ただし、従業員は、同一疾病につき240日を超えてこの給付金を請求することはできません。対象者となるには、従業員は過去12ヶ月のうち3ヶ月以上ソーシャルセキュリティシステム(SSS)に保険料を納付していなければなりません。
雇用主は従業員に傷病手当を支払う責任があり、この金額は、SSSから払い戻しを受けることができます。
既婚・未婚を問わず、女性の労働者は、流産を含む妊娠4回目まで、60日間の有給の産前産後休暇を取ることができます。
これは、過去12ヶ月のうち3ヶ月以上ソーシャルセキュリティシステム(SSS)に保険料を納付していることが条件となります。帝王切開が必要な場合や子宮外妊娠で手術が必要な場合は、78日間の有給休暇が与えられます。
既婚の男性労働者は、妻の4回目の妊娠まで、7日間の父親の育児休暇を取ることができます。男性労働者は、出産時または流産時に配偶者と同居している場合に限り、父親の育児休暇を申請できます。申請は、合理的な期間内に行う必要があります。
ひとり親は、育児義務を果たすため、特に物理的な立ち会いが必要な場合、最大7日間の育児休暇を取ることができます。ひとり親の育児休暇を取得するには、休日や許可された欠勤を含めて1年以上の勤務が必要です。この1年間の在籍期間は、継続的であっても中断があっても構いません。
フィリピンでは、暴力の犠牲となった女性労働者には10日間の有給休暇が与えられます。暴力には、身体的、性的、心理的、経済的な虐待が含まれます。
婦人科手術を必要とする女性で、6ヶ月以上勤務している者は、2ヶ月までの有給休暇を取得できます。
従業員は、家族の死亡時に最大3日間の無給の休暇を取ることができます。
フィリピンの年金制度は、ソーシャルセキュリティシステム(SSS)が管理しています。退職までに10年間以上、SSSに保険料を納付していた退職従業員は、毎月年金を受け取る資格があります。
保険料納付期間が10年未満の労働者は、利息を含め本人および雇用主が納付した保険料と同額の一時金を受け取ることができます。
企業は多くの場合、現地の雇用法で義務付けられているもの以外にも、追加的な福利厚生を提供しています。
グローバルで競争力のある福利厚生制度を開発してフィリピンの人材に提供すれば、競合他社を抑えて優秀な人材を獲得することができます。さらに良いことに、公平な報酬計画により、グローバルに分散したチームの士気、調和、モチベーション(従業員の定着率を高く保つ上で重要な要素)を維持することが可能になります。
求職者は今日、リモートワークが容易に利用できるグローバルタレント市場において、特定の特典を積極的に求めるようになっています(当社の価値観に基づく福利厚生ガイドで詳しく説明しています)。
国際競争力があり、コンプライアンスに準拠した福利厚生制度を構築することは、決して複雑なことではありません。Remoteは、グローバルチームが安心、安定、ワークライフバランスを享受できるような福利厚生の提供に献身しています。社内の人事スペシャリストとグローバル福利厚生専門家からなるチームは、絶えずお客様と連絡を取り合って、優秀な人材を引き付けるためのカスタマイズされた競争力のある福利厚生制度の構築に取り組んでいます。
ビジネスの規模が国際的な人材の確保を妨げるべきではありません。フィリピン人労働者やその他の国際的な人材の雇用を検討している中小企業にとって、福利厚生制度にかかる法外な費用が阻害要因になる必要はありません。
費用対効果の高いグローバルな福利厚生のための中小企業向けガイドを参考にして、国際的な従業員に喜ばれる特典を、多額の費用をかけずに見つけることができます。
フィリピンで優秀な人材を引き付けるために検討すべき追加的な福利厚生は以下のとおりです。
フィリピンの平均給与は月44,600 PHP程度です。他の国と同様、給与は職種や学歴などによって大きく異なります。フィリピンで優秀な人材を引き付ける上で給与水準が大きく影響することは間違いありません。
祝祭日や年次休暇以外の有給休暇も魅力的なインセンティブになり得ます。フィリピンで活動する多くの企業は、従業員に最大18日間の有給休暇を与えています。有給休暇を増やすことで、国際企業は優秀な従業員を保持できるようになります。
追加の有給休暇を提供するのと同様に、よりグローバルに一貫した育児休暇制度をフィリピンで提供すれば、その見返りとして従業員の忠誠心とコミットメントを高めることができます。フィリピンの文化では、家族のつながりが強く、親戚関係も非常に緊密な傾向があります。
その結果、育児支援のための追加的な制度が従業員の間で非常に高く評価されています。
13か月分の給与に加え、多くの企業が中間期ボーナスを従業員に支給しています。フィリピンの雇用主が優秀な人材を引き付け、保持するためのインセンティブとして、この追加報酬を提供することは珍しくありません。
フィリピン出身のカスタマーサクセスマネージャー、日本出身の翻訳者、コロンビア出身の広報担当者のいずれを採用するにせよ、求職者は、雇用主が提供している福利厚生の質に基づいて新たなキャリア機会を評価します。
人事専門部門を持つ完全所有の現地法人を新規市場ごとに設立する代わりに、雇用代行(EOR)業者を利用することで、費用対効果が高く、迅速かつ安全な代替手段によって、国境を越えてチームを成長させることが可能になります。
(APACまたは海外における)グローバル採用の拡大に伴う複雑性を管理するためのプロセスが確立されていない企業にとって、Remoteのような雇用代行業者は即効の解決策となります。
RemoteのEORサービスでは、魅力的な福利厚生制度、法規制に準拠した雇用契約、競争力のあるオファーを作成するために必要な見識を、グローバル人事の専門家から得ることができます。
雇用代行業者をどのような場合に利用すべきかについては、以前に別のガイドで詳しく説明したとおりです。以下は、EORを利用することでリスクを劇的に軽減できる主要な分野の例です。
魅力的なグローバル福利厚生制度の構築
現地の労働法に準拠した福利厚生の管理
解雇への対応
リモート従業員によって作成された知財および特許の保護
国際雇用の複雑な問題の管理は、Remoteのような雇用代行業者にお任せください。グローバル人事に伴う複雑な業務がバックエンドで処理され、すべての情報を集約したダッシュボードで以下を行うことが可能になります。
給与計算と休暇の管理
地方雇用税の処理
福利厚生の法規制準拠の徹底
競争力のある公平なグローバル報酬パッケージの提供
グローバルチームの迅速な拡大
Remoteが国際的な人事採用を簡素化し、分散したチームを迅速に拡大できるようにする仕組みをご覧ください。
RemoteのグローバルHR専門家が、世界の優秀な人材を引き付け、維持するために、現地の状況に合わせた法令遵守のプログラム構築に関する実践的なアドバイスを提供します。
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