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Employer of Record(EOR)とPEO — 29 min
ポーランドでは、グローバルな経験を積んだ専門人材のほか、国際勤務やリモートワークに対して積極的なマルチリンガル人材が増加しています。ポーランドの労働力は、依然として欧州で最も教育水準が高く、同時に最も技能の高い労働力でもあります。いずれも、(特に現地の主なITおよびエンジニアリング部門に)積極的に人材を求める数々の多国籍企業を引き付けて止まない理由となっています。
ポーランドに雇用の幅を広げる前に、現地の法的要件、特に法令遵守と従業員福利厚生に関連する要件をすべて検討する必要があります。
当社は、ポーランドの人材を雇用する際の義務を、分かりやすく理解できるようにしたいと考えています。世界各国に法人を持つ経験豊富なEORとして、Remoteは、ポーランドを含む複数の国で競争力がありコンプライアンスに準拠した福利厚生パッケージを、シンプルかつ低コストでスケール可能に管理できることを理解しています。
ポーランドの労働者向けの福利厚生に関する本ガイドでは、提供の義務がある福利厚生と、提供すると現地市場で競争力になる、その他の特典について説明します。主な内容は以下のとおりです。
ポーランドにおける福利厚生の対象者
ポーランドにおける法定および一般的な従業員福利厚生
ポーランド従業員向けに考慮すべき補足的な福利厚生
海外従業員向けの福利厚生を設定して管理する方法
ポーランドの従業員は、現地の労働法に基づく最低限の雇用権利を有しています。一方、契約社員はほとんどの雇用関連法の対象外となっています。契約社員には(年次休暇や病気休暇などの基本的な規定を含む)同じ福利厚生を受給する資格がなく、自ら納税する必要があります。
新規雇用者との雇用関係は、正しく分類する必要があります。現地の法律では従業員と見なされる人材を誤って契約社員として雇用した場合、以下の追加費用を遡って請求される可能性があります。
未払いの税金
未支給の法定福利厚生
休日・休暇
さらに、労働者が開発した知的財産をリスクにさらすことになり、所有権をめぐる複雑な問題が生じます。
企業が個人を従業員と見なしているか、契約社員と見なしているかにかかわらず、重要な判断はポーランドの立法府が行います。雇用関係を従業員と分類すべきであり、法定福利厚生の提供を怠っていたことが判明した場合は、誤分類による深刻なリスクが生じる可能性があります。
(この概念を理解するための詳細な情報については、誤分類に関する専門ガイドを必ずお読みください。)
国際的に展開する雇用主には、従業員との公平性を維持するために、契約社員に対する福利厚生制度の提供を検討することが強く推奨されます。ポーランドでは受給資格の付与が義務付けられていないからといって、雇用形態だけを理由に契約社員に福利厚生を提供できないというわけではありません。
契約社員に手厚い福利厚生を支給することで、特にリモート環境にある契約社員との間に強い信頼関係を築くことができます。ただし、支給する福利厚生の種類によって、恒久的施設や誤分類のリスクが生じることには注意が必要です。
有給休暇、フレックスタイム制、育児休暇規定など、価値の高い福利厚生を提供することで、多くの場合、この法律を遵守できます(これについては、国際契約社員に福利厚生を提供するガイドで詳しく説明しています)。
RemoteのようなEmployer of Record(EOR)は、ポーランド(または他国)の雇用法に従って関連するリスクを最小限に抑えられる、具体的なアドバイスを提供できます。
法定福利厚生は義務的福利厚生とも呼ばれる権利です。雇用主は、これを従業員に支給するよう法律で義務付けられています。一般的な例としては、年次有給休暇、育児休暇、労災保険、有給病気休暇などの福利厚生が挙げられます。
家族手当、社会扶助費、失業補償はすべてポーランドの社会扶助制度の一部です。ポーランドの社会保障制度は、従業員、自営業者、その家族など、フルタイムで雇用されている、事実上すべての国民を対象としています。
従業員は、社会保険制度に関する法律に基づき、年金、障害保険、健康保険、傷害保険に加入します。この法律では、社会保険加入の原則と加入方法を規定しています。確定拠出年金では、雇用主と従業員がそれぞれ別の金額で拠出します。一方、雇用主は、社会保険額を計算し、従業員の給与から控除する責任があります。また、雇用主には、社会保険庁に適時に保険料を納付する義務もあります。
従業員には、傷病手当金、出産手当金、補償給付金、葬儀給付金のほか、業務上の事故による身体傷害の場合の損害賠償金が、社会保険への拠出額に基づいて支給されます。また、従業員には、公的医療施設を利用する権利も付与されます。
休暇期間は勤務年数に応じて決まります。従業員がこの方法を選択した場合、休暇を小分けにすることができます。従業員は、年次休暇に加えて、日曜日および祝日の休暇を取る権利があります。
同じ雇用主のもとでの勤続年数が10年未満のフルタイム従業員は、年間20日間の有給休暇を取得する権利があります。同じ企業での勤続年数が10年以上になると、従業員は年間26日間の有給休暇を取得する権利があります。未使用の休暇は翌年に繰り越すことができますが、翌年の9月30日までに消化しなければなりません。雇用契約の終了を除き、未取得の休暇に対して補償を行うことは法律で禁止されています。
女性従業員は、子どもを1人出産すると、20週間の産前産後休暇を取得する権利が付与されます。複数の子どもを出産した場合は、その期間が比例して延長されます。妊娠中の従業員は、出産予定日の最大6週間前まで産休を取得することができます。両親のいずれかが、さらに32週間の育児休暇を取得できます(合計52週間)。一般的に、出産に関連する休暇を取得する親は、最初の6か月間は基本給与の100%、次の6か月間は60%を受け取る権利があります。
以下は、従業員が最低限取得できる産前産後休暇の一覧です。
子ども1人の出産/養子縁組の場合は20週間
子ども2人の場合は31週間、3人の場合は33週間、4人の場合は35週間
子ども5人以上の場合は37週間
従業員は、病気で就労できない場合、給与の80%を受け取る権利があります。感染症による隔離が1年間に33日以上続く場合や、50歳以上の従業員に対する感染症による隔離が1年間に14日以上続く場合にも同様の規定が適用されます。
従業員が、所定の期間内に妊娠中の疾患により就労できなくなった場合、その従業員には収入の100%を支給される権利があります。就労不能期間が長引く場合は、社会保険庁の傷病手当金の受給対象となります。
暦年内において、重度または中等度の障がいを持つ人は、追加で10日間の休暇を取得する権利があります。この権利は、1年間の雇用期間を経た後、かつ上記いずれかの障がい等級を取得した後に与えられます。
2019年以降、ポーランドのすべての雇用主には、年金の提供が義務付けられています。PPK(Employee Capital Plan)は、個人が長期にわたって貯蓄を増やせるよう、ポーランド政府が導入した新しい法律です。
18歳から55歳までの従業員は自動加入となり、脱退しない限り加入が継続されます(脱退届は必ず書面で提出)。雇用主(給与総額の最低1.5%)、従業員(給与総額の最低2%)、国(ウエルカムパッケージの250 PLNおよび年間補助金の240 PLN)がPPKに拠出します。
グローバル企業には、ポーランドの従業員への追加的な福利厚生として、退職年金プランの提供を検討することが強く推奨されます。この規定は、他のグローバル従業員との公平性を維持し、チームに対する配慮と取り組み姿勢を示すうえで役立ちます。こうした福利厚生があれば、優秀な人材が競合他社ではなく自社を希望するようになる可能性があります。
ポーランドでは、政府によって最低賃金が定められています。ポーランドのすべての従業員は、少なくともこの給与水準で報酬を受け取る必要があります。ポーランドの最低賃金は、月額3,490 PLN、時給22.80 PLNです。雇用主がポーランドの最低賃金を支給しない場合、ポーランド政府から制裁を受ける可能性があります。
給与は月単位で支払われ、従業員は翌月の10日までに受け取る必要があります。ポーランドでは、通常の労働時間は週40時間以内、1日8時間以内です。労働時間の制限が適用される場合、残業手当の支給が必要となります。
1週間の最長労働時間は48時間であり、年間時間外労働は150時間を超えてはなりません。時間外労働は、1週間に最大45時間勤務した後に発生し、時間外労働が夜間、日曜日、または休日に行われた場合は、法定賃金の200%が支給されます。それ以外の時間帯に時間外労働が発生した場合、従業員は通常の給与の150%を支給される権利があります。
ポーランドでは、他のEU諸国と同様に、年金(PPK)、社会保険、労働医療が法定保険パッケージに含まれています。ポーランドでは、民間健康保険、生命保険、ビジネス出張保険などはすべて補足的な従業員福利厚生となるため、雇用主にこうした保険を提供する義務はありません。
しかし、これは先進的な雇用主にとっては好機でもあります。ポーランド従業員の報酬パッケージにこうした補足的な福利厚生を加えることで、基本的な福利厚生の提供を選択した競合他社とは即時に差別化できます。
ポーランドで新しい人材を雇用する際にかかるコストの詳細を確認するには、無料の従業員コスト計算ツールをご利用ください。
ポーランド政府が国民に基本医療を提供していますが、企業が補足的な健康保険を提供することも可能です。国際的な雇用主には、従業員がより充実した補償を受けられるよう、この福利厚生を検討することを強く推奨します。
民間保険には、歯科保険から眼科保険まで、また、公共部門が限定的で包括的に含められない特殊な民間保険も含まれます。これは、救急受診、入院、外来手術、その他に想定される追加費用などの追加で発生した医療費を従業員が支払う際に役立ちます。
実際、健康保険やその他の追加保険(歯科保険、視力保険、生命保険など)を福利厚生として提供することは、新規採用者との信頼関係を築き、競合他社との差別化を図るうえで有効な方法です。
ポーランドの従業員福利厚生プランには、年次賞与の規定が含まれている場合があります。企業によっては、堅実な業績に対する報奨として、年度末に従業員に賞与を支給する場合もありますが、この点に関して法的な義務は一切なく、市場から期待されることもありません。つまり、賞与の支給は各企業の裁量に委ねられています。
自社の取り組み姿勢とチームへの配慮を示すには、福利厚生の追加が推奨されますが、金銭的な報酬がチームのモチベーションや満足度の向上につながらないこともあります。価値の高い福利厚生(特にワークライフバランスを改善できる特典)は、雇用主にはコストがかからず、従業員には有益なものとなります。
従業員は、従来の福利厚生だけに関心があるわけではありません。ポーランドの労働者の多くは、ワークライフバランスの概念を取り入れ、柔軟な在宅勤務が可能な企業での就労を積極的に求めています。
こうした企業文化を強化する方法の1つが、在宅勤務手当など、具体的なリモートワークに関する福利厚生の提供です。これは、従業員の効率と生産性を大幅に高める、比較的コストのかからない福利厚生です。
インターネット、電気代、電話契約の増加分を補助する手当を支給することで、在宅勤務をするポーランドのチームメンバーに対し、具体的な支援を提供することができます。
リモートワークは、通常の9時から5時までの勤務を、もう少し柔軟な働き方に変えられることも実証しています。
契約にフレックスタイム制に関する規定を盛り込むことで、ワークライフバランスの向上につながります。ワークライフバランスは、リモートワーク環境やハイブリッドワーク環境とともに変化し続けています。
従業員は、雇用主に、自分の成長に協力してもらいたいと考えています。自己啓発への投資などの費用効果の高い特典は、労働者が新しいスキルを習得するうえで役立ちます。また、こうしたプログラムは、従業員の定着率を高めると同時に、チームのキャリアアップに対する配慮を示すことにもつながります。
フィットネス会員権 オフィスのジムを利用できないリモート従業員も、健康を維持したいと考えています。フィットネス会員権の取得を援助する少額の費用を支給することで、従業員は評価されていると実感できます。リモートチームにとって、ヨガなどのオンライン講座の会員権は魅力的な選択肢です。
リモートワーカーに求められる業務内容に合わせて福利厚生制度を調整し、有給休暇の追加や食費、旅費の補助などの特典を盛り込むこともできます。
また、ストックオプションや利益分配のような従来型のアプローチもありますが、これらは経営職や影響力の大きい職務に適しています。
重要な点は、中身のない特典にはあまり費用をかけず、従業員が望む生活を実現できる福利厚生に費用を集中することです。詳しくは、中小企業がリモートチームに提供できる費用対効果の高い特典ガイドをご覧ください。
複雑な国際雇用や、グローバル労働者の給与支給・福利厚生の管理は、社内対応が非常に難しいため、負担の大きい作業です。
したがって、事業を展開する各国の労働法を遵守できるソリューションが必要になります。
各新規市場において、専門的な人事部門を持つ完全所有の現地法人を設立する代わりに、EORを利用すれば、費用対効果が高く、スピーディで安全な代替手段として、国境を越えたチームの成長を支援します。
ポーランドで、あるいは他の国で、グローバル雇用の規模拡大の複雑な業務を管理するプロセスが確立されていない場合、RemoteのようなEORがあれば、すぐに安心できます
RemoteのEORサービスでは、現地の雇用専門家が、強力な福利厚生制度、法令を遵守した雇用契約、応募者に競争力のあるオファーを作成するうえで必要な情報を提供します。
Remoteは、国際雇用の複雑な業務を管理します。Remoteのシンプルなソフトウェアハブと、グローバルHR専門家チームを組み合わせることで、すべての細かい作業を整理して分散型チームを管理できます。
当社のグローバル雇用専門家チームは、バックエンドで複雑なグローバル人事業務を処理します。1つのダッシュボードにすべての機能を集約した当社のソフトウェアを利用すると、次のことが可能になります。
給与処理や有給休暇の管理
現地の雇用税を適切に処理
法定福利厚生の遵守
競争力のある公平なグローバル報酬パッケージの提供
グローバルチームのスピーディな拡大
Remoteを利用した国際雇用の簡素化や、分散型チームのスピーディな拡大については、こちらをご覧ください。また、さらに具体的な雇用情報については、ポーランドの国別雇用ガイドをご覧ください。
RemoteのグローバルHR専門家が、世界の優秀な人材を引き付け、維持するために、現地の状況に合わせて法令を遵守した福利厚生制度の構築に関する実践的なアドバイスを提供します。
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